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2008年9月21日 (日)

L.A.X.

THE GAME

商業的な音楽が蔓延するこの現在のシーンにおいて、

特別な輝きを放っていると僕は捉えている。

それは、彼の新作、

通算3作目となる 「L.A.X.」

そのタイトルからも窺い知れよう。

200pxgame_lax   

 

 

 

 

 

 

 

正にL.A.の玄関口にも当たる国際空港の名を、

自らの引退を掲げた本作のタイトルに当てる事からもわかるように、

今のシーンにおいて、

特にメジャーのシーンにおいて、

これほどまでにローカリズムを主張する作品は

ほとんど見当たらない。

H-TOWNの勢力が落ち着いてしまった今となっては、

本当に稀有と言えるメジャー作品だろう。

その点だけ伺っても、

古くからのHIP HOPファンだった僕にとっては、

本作は賞賛にふさわしいと言える。

 

さて、その内容はというと、

先ほども述べたように、

古くからのHIP HOPファンである僕の耳を捉えて話さない、

HIP HOPゴシップやアーティスト名、

名曲のタイトルやパンチ・ラインが、

ふんだんに鏤められた THE GAME 独特のライミングが、

これまで2作同様、否、それ以上に、

効果的な印象を深く与える。

ともすれば、下世話と思えなくもなかった

1作目でのこの彼のライムも、

3作目を経て、立派な芸術的スキルと呼ぶにふさわしいまで、

成長を遂げていることに感銘を受けるほどだ。

2ND作中、加熱していた 50CENT とのビーフも、

50 が落ち目となった今では、

あえて深く引き摺ることをせず、

THE GAME 自身の新たな展開を本作に見出せる。

それが冒頭にも述べた、

ローカリズムと全国区の融合なのだが、

彼が本当にそれを狙っていたかどうかはわからないが、

本作はその点で見事な成果を残している。

まず、ゲスト陣の顔ぶれから挙げていくと、

③の ICE CUBE 、④の RAEKWON 、⑤の LIL' WAYNE 、

⑦の BILAL 、⑧の LUDACRIS 、⑪の NE-YO 、

⑭の COMMON 、⑮の LA TOYA WILLIAMS 、

⑰の KEYSHIA COLE 、⑱の NAS 他、

これだけ見ても全国区の、

しかも各地を代表するような豪勢且つ、

シブい人選に心奪われる。

しかも、①、⑲のINTRO、OUTROを

DMX の 「PRAYER」 をまんま使用している辺りに、

THE GAME の作品の面白味の本質を窺い知ることができる。

つまり、その本質とはこうだ。

THE GAME はこの音楽シーンの強烈なフォロワーであるということ。

それは、EMINEM の出現以降、

50CENT やこの THE GAME 自身や、

KANYE WEST 、 9TH WONDER など、

多くのアーティストに見られる、

僕と同時代のこの音楽シーンの歴史を体感した、

いわゆる “激動の90年代” から強烈なインスピレーションを受け、

そいつを現在のシーンに反映させる、

彼らは猛烈な “HIP HOPファン” であると言える。

本作内でも、先に挙げた DMX 「PRAYER」 の使用や、

RAEKWON の参加などに見られる、

シブい点を突いた人選の他に、

今最も勢いのある LIL' WAYNE や NE-YO の登用は、

現在のHIP HOPファンにとっても実にスリリングな人選である。

さて、上記のような煌びやかな人選にも拘らず、

THE GAME 自身の個性は全く失われていない。

あるいは、ゲストが遜色して聴こえるほどに、

THE GAME のフロウは輝いている。

特筆すべきは、③での ICE CUBE 、

④での RAEKWON の映え方であろう。

ICE CUBE はフックのみを担当しているが、

正にL.A.玄関口を迎えるにふさわしい、

濃厚なL.A.、COMPTON、CALIFORNIAのタフな生活を描き出す。

燻し銀の、正に煙った都市伝説の語り部としての

RAEKWON と THE GAME のヨタり具合も素晴らしい。

その他、人生をシリアスに歌い上げた、

LIL’ WAYNE との⑤や、

自らを東西の王としてリリカルなスキルを展開する、

NAS との⑱も聴き所に挙げられる。

COMMON との⑭も面白いが、

これは THE GAME の一人勝ち。

特に2ND VERSEは絶品です。

プロデュース・ワークについて言えば、

今作も DRE は不参加ながら、

J. R. ROTEM 、JELLY ROLL 、COOL & DRE 、NOTTZ 、

DJ TOOMP 、SCOTT STORCH 、KANYE WEST 、HI-TEK 他、

昨今を賑わすこれまた豪勢な顔ぶれが揃っている。

個人的には J. R. ROTEM の②、③、

JELLY ROLL の④、

NOTTZのファンキーさの輝く⑦、

DJ TOOMP のベース音のうなり具合がロッキシュな⑩、

SCOTT STORCH の⑫がお気に入り。

 

総体的に言って、

素晴らしい作品と呼べなくはない作品だと思う。

特に、THE GAME のスキルや勢いは、

前作、前々作に引けをとらぬどころか、

以前にも増して輝きを放っている。

ただ、、、ただ、やはり思わずにいられないのが、

DRE 総合プロデュースであったならば、

更にどんなにか素晴らしかったであろう?!

という点に尽きる。

願わくば、THE GAME 、彼の引退宣言が撤回され、

次作こそ、DRE に製作を委ねた “L.A.讃歌” ともなる大作を

期待せずにはいられない。

個人的には、TIMBO とのコラボも再現してもらいたい。

 

今もL.A.で戦い続けている僕の同志にピースを!!

 

オススメ度 8.6

(ラップ:1.9 トラック:1.6 キャラ:1.9 話題性:1.5 構成:1.7) 

2006年12月13日 (水)

L.A. STYLE 三部作

THE GAME

XZIBIT

ときたので、

今回は “L.A. STYLE 三部作” ・・・ではないけど、

せっかくなのでこの作品を紹介しましょう。

SNOOP DOGG の通算枚目となる新作、

「THE BLUE CARPET TREATMENT」 です。

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“L.A”. とはいうものの、、、

正確には、

THE GAME はCOMPTONだし、

SNOOP はLONG BEACH、

XZIBIT にいたっては、

実は出身は西海岸でさえないDETROITなのだから、

実は生粋のL.A.っ子はこの中に誰一人いない。

でもあえて “L.A. STYLE” で括っちゃいます。

さて今回は、

この SNOOP の新作を通して、

L.A.及びWEST COAST HIP HOPの現在の立ち位置を

測っていきたいと思います。

 

 

WEST COAST HIP HOPが時代の潮流として持て囃され、

一大勢力を誇っていたのは、

今から十年以上昔の話です。

この十年の間、

東西抗争をはじめ、

仲間内での分裂など、

まとまりをなくしたL.A.勢力は個々での活動に終始し、

大きなムーブメントを作るに至りませんでした。

その間、

ATLANTAを中心とする南部系のムーブメントが盛り上がり、

昨年はいわゆるH-TOWN、

HUSTON産のHIP HOPがシーンの話題をかっさらいました。

そこで焦り出したのがL.A.を中心とする

WEST COASTのラッパー達です。

仲間内で争そっている場合じゃない!

西海岸復権をかけて、

内輪もめしていたかつての仲間達とヨリを戻し、

手に手を取り合い輪になって、

かつての強固なWEST COAST CONNECTIONを取り戻そう!

その中心にいるのが SNOOP であり、

現在のその復権にかける動きの集大成となるのが

本作なのです。

それだけに、

結論から言えば、

本作の完成度はズバ抜けて高いです。

個人的な感想だが、

SNOOP のソロ作品群の中では、

デビュー作に勝るとも劣らぬほどに

高いクオリティーを感じています。

正にWEST COAST HIP HOPの真髄を一枚にまとめ上げた

その歴史の結晶とも言うべき大作と呼べるでしょう。 

 

 

本作近年の彼の他の作品のどこがどう違うのか?

まずその違いを感じさせるのが、

イントロの①と続く②です。

幕開けを告げる GEORGE CLINTON に続き、

BATTLECAT の制作するビート上で、

短いながらにライムする①の SNOOP

あるいは、

FREQENCY なるプロデューサーの作る

ジャジーなオケの上でライムする②の SNOOP は、

明らかにこれまで築き上げてきた

彼特有のスムースな語り口調を身上とする

そのフロウとは違っています。

彼のフロウは

ビートを半拍遅らせて、

後ろの音に言葉を引っ掛けるようなスタイルを

これまで主流として用いていたのですが、

この①や②では、

珍しく前のめりでビートに被さるようにライムしているのです。

このスタイルはそれこそ今の彼にとっては珍しいのですが、

デビュー当初の 「DOGGYSTYLE」 で世界を熱狂させた、

緊張感溢れるGANGSTA BANGIN'を

見事に描き出したスタイルでもあるのです。

つまり彼はそのフロウ・スタイルからして

彼の原点回帰ともなる

WEST COAST HIP HOP復権の体現を

本作にて図ろうとしているのかもしれません。

盟友 NATE が歌い上げる、

FREDWRECK 制作曲の③に続く、

CYPRESS HILLB-REAL が参加した

THE NEPTUNES 制作の④でも

彼の初期作品に漲る緊張感溢れるフロウを

耳にすることができます。

それにしてもこのビート、

明らかに西寄りな作風なので、

NEP が作っている楽曲だとは

ライナーを読むまで気付きませんでした。

この④、ハッキリ言ってカッコイイです。

特に③からの流れで入ってくる掛かりのイントロ部や、

チープなフックは病みつきなるくらいカッコイイ。

最近 DRE 近辺でその名をよく見かけるようになった

NOTTZ の制作するクセのあるビート上で

R. KELLY が参加し歌い上げる⑤は

近年の SNOOP 作品ではお馴染みのスタイルだが、

やはり本作では亜流となるモノであろう。

続く⑥では西海岸を代表する豪華メンツが勢ぞろいし、

誰が主役か分からないほどに

熱いマイクを交し合っている。

中でも目立っているのが

BAY AREAの巨匠、E-40 の超絶的な変態フロウと、

DAZ のいかつく無骨なフロウである。

特に E-40 はここでズル剥けたライムを披露してくれていて、

そのスキルの高さやオリジナリティーを楽しませてくれている。

⑤での RICK ROCK の作るビートは音数が少なく、

それこそ NEP が作ったのかと思わせるほどだ。

TIMBALAND 制作のバウンシーな⑧は

SNOOP 作品では異色的だが、

なかなか堂に入っていてカッコイイ。

それにしても TIMBO の作り出すビートは

本当にボトムが太く、ロウだ。

楽j曲の構成、展開も

常人には思い付かないような広がり方をする。

続く重厚なオケの重く響く⑧では

SNOOP に非常に近しい存在である、

現在のWEST COAST HIP HOPの象徴とでもいうべき

THE GAME が参加している。

SNOOP が本作をして、

あるいは D.P.G. の復活や 213 を再集結して、

西海岸に働きかけるようになったそもそものきっかけは

この若き THE GAME なる男の存在にあったのではないかと

僕は見ているのだが、

そこに DRE を加えた

この三者のトライアングル的な関係性が

現在のWEST COAST HIP HOPを完全に象徴していると言える。

そして、出来過ぎな話ではあるが、

続く⑨で件の DRE がプロデューサーとして登場する。

ネタは BUSTA THYMES「E. L. E.」 内、

「EVERYBODY RISE」 でお馴染みとなる

THE CONTROLLERS

「IF TOMORROW NEVER COMES」 使いだ。

ちなみに、

BUSTA「EVERYBODY RISE」

NOTTZ が制作している。

僕としては NOTTZ の時のビートのインパクトが

あまりに強かったので、

少しビートが弱い印象を⑨で受けてしまうのだが、

それにしてもこのループは映えが良く、

鉄板である。

ここでは最近大活躍中の AKON が参加している。

続く⑩は BIGGIE「GOING BACK TO CALI」

イントロ部をループさせた

その名もまんまの 「LAX」

“LAX” はL.A. の国際空港の名前)

BATTLECAT の産み出す軽妙なオケの上で

ICE CUBE が参戦し、

奇怪なグルーヴを捻り出している。

⑪は再び NEP の製作曲になるのだが、

これもかなりロウなビートで、

NEP らしからぬ不穏な雰囲気を醸し出している。

ここに乗っかる SNOOP のフロウが

また緊張感溢れていてカッコイイのだ。

対照的に、続く⑫は

DRE 作の緩めのオケが哀愁を帯びて響く。

⑬、⑭、⑮は最近の風潮が混ざったカンジで、

ちょっと軽過ぎるかな。

やはりラップ好きな僕としては、

⑭、⑮のように

ラップのヴァースより歌の部分の方が長い曲は

あまり好ましくありません。

そういう意味では⑯も

AKON の歌い上げる部分の方が

SNOOP のラップ・パートより長いのですが、

まあこれは仕方ないかな。

リード・シングルとして切られたこの曲は、

AKON 制作による秀作です。

続く⑰も鉄板シンガー、

JAMIIE FOXX が制作、参加した曲です。

最近のメジャー作品には

必ずと言っていいほど JAMIE FOXX のゲスト参加した楽曲が

収録されている風潮にあるのですが、

僕としてはその必要性に対し

首を傾げずにはいられません。

とは言うものの、

本作内でのこの曲は

オケのチープさも含めて、

なかなかイケるクチです。

D12MR. PORTER が制作に絡んだ⑱の

色気のなさもステキなのだが、

続く⑲の鬼のようなイカツさは正に圧巻です。

しかもゲストには、

GOLDIE LOCMC EIHTKAMKURUPT!!

最強過ぎます。

特に MC EIHTKAM を招くなんて、

演出がニク過ぎですね。

コレがほんとカッコイイ。

僕の希望としては、

ミックス・テープのレベルでいいので、

SNOOP にこういうハードなGANGST BANGな作品を

今後出してもらいたいですね。

続く⑳は本作中でも目玉となる楽曲でしょう。

DRE 制作、参加に加え、

D'ANGELO もゲスト参加した秀逸の一曲。

オルタナティヴに展開するループと

D'ANGELO のソウルフルな歌声が美しく棚引きます。

そして最終曲、

STEVIE WONDER を迎えた、

DJ POOH 制作の軽妙な楽曲で

作品の幕を降ろします。

 

 

とまあ、

ほぼ全曲に触れて書いたので長くなりましたが、

それだけ本作がすばらしい出来だということを

皆さんに伝えたかったのです。

それこそPOP I-CONとして、

あまりハードな印象のなくなっていた

近年の SNOOP 作品に対して、

可もなく不可もなく、、、

といった評価をしか持たなかった僕にとって、

本作は

SNOOP の偉大さを改めて再確認できる作品でもありました。

それに西海岸の底力を十二分に堪能できる作品でもあります。

コレまでの記事で何度も振れてきた

“WEST COAST HIP HOP復権”

もう間もなく実現に近づいているように思えます。

THE GAME

XZIBIT 

SNOOP 、、、

さあ後は、

DRE 「DETOX」 で決定的になるでしょう。

 

オススメ度 9.1

(ラップ:1.7 トラック:1.8 キャラ:1.9 話題性:1.8 構成:1.9) 

 

 

 

2006年12月10日 (日)

久しぶりだね、X TO THE Z

前回の THE GAME に引き続き、

ウェッサイ繋がりということで、

今回は “MR. X TO THE Z” こと、

XZIBIT の通算6枚目となる新作、

「FULL CIRCLE」 を紹介したいと思います。

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奇しくも THE GAME の先輩格として

DRE 門下で立派に結果を残し、

その後すぐに独り立ちした XZIBIT ですが、

その活動について、

MTV 内の車改造番組のホストをしていたという以外、

あまり情報が入ってこなかったところを見ると、

音楽環境的にはもしかすると芳しくなかったのかもしれません。

RCA から LOUD での絶頂期を経て、

SONY/COLOMBIA

そして今作の KOCH へのレーベル移籍の経歴を見てみても、

そのあたりの事情が伺えます。

しかしながら、

KOCH のイメージと XZIBIT のアングラなイメージは

非常に近しいモノがあるので、

この組合わせに違和感がありません。

というより、

相性ピッタリな予感が

本作を聴く前からプンプン漂っていました。

で、

フタを開けてみると・・・・・

 

 

イントロからしてシビレるほどに、

XZIBIT 本来の姿をまんま反映させたような、

JELLYROLL 製作の①で幕を開けます。

JELLYROLL 自身が担当するフックも効果的なこの曲が

作品のド頭を見事に飾っていて、

本作に対する期待値は俄然高まっていきます。

続く、楽曲の展開が非常に興味深い②も

JELLYROLL 製作楽曲になります。

更に続く③は、

WEST COASTの大御所、

DJ QUIK 製作によるモノ。

エフェクトで潰したボーカルを

軽妙なビートに乗せたアンバランスさが

絶妙な味わいを醸し出しています。

合いの手と最後のシャウトで

KURUPT の参加する④に続く⑤は、

他愛ないTVショウをパロったインタールードなのだが、 

このマヌケ具合が何度聴いても笑わせられる。

続く⑥はストーリーテリングが秀逸の作品だが、

この曲で言えるのは、

XZIBT のライミングの硬さについてだ。

それこそ、

前回の THE GAME の記事を書く為に、

この1週間あまり、

THE GAME の新作を聴き齧っていたものだから、

彼のユルイ (悪く言えば “拙い” ) ライムが

耳にこびりついていたので、

この曲などで聴かれる

XZIBIT の硬いライムを耳にしていると、

すごく新鮮に聴こえてくるほどだった。

流石というか、

ベテランとしての XZIBIT の実力を

こういうといころで改めて思い知るに至った。

RICK ROCK の作る呪詛めいた声ネタの⑦に続き、

のたくるウワモノが正にウェッサイなビート上を、

DAZXZIBITTHE GAME とマイクを回す⑧は、

“WEST COAST HIP HOP復権”

一役を担いうる一曲となるであろう。

特に力強い DAZ のラップがよく映えています。

続く⑨は本作中でも特に抜きに出て

クオリティーの高い楽曲に仕上がっている。

正にハイライトとも言うべき一曲です。

個人的には本作中、一番好きな曲で、

このテの楽曲に XZIBIT のラップが

また良く映えている所がミソでもある。

ラップというよりポエトリー・リーディングを

DRE 風なオケの上に乗せた⑩、

トリッキーなビートが実験的な JELLYROLL 製作曲⑪、

THE GAME の新作でも活躍を見せた DJ KHALI 製作のオケに

DJ QUIKKING-T という、

L.A.のラップ・レジェンド二人を迎えた⑫が続く。

更に⑬では、

JELLYROLL 製作の掴みどころのないようなビート上で、

BAY AREAの巨頭、TOO $HORT と、

再び KURUPT が参加し、

三者三様のやり方でWEST COASTを代弁している。

そして最終曲となる⑭。。。

このループも実に素晴らしい。

哀愁漂う流麗なループが紡ぎ出すシックな終幕は、

実はこのテのビートも得意にしている XZIBIT にとっては

正にお誂え向きの大団円である。

 

 

インディー最大のレーベルとはいえ、

きっと KOCH の性質上、

大々的なプロモーションは望めないであろう本作ではあるが、

しかしながら、

そこらに広まっている薄まった

“HIP HOP的作品”

と比較すれば、

格段にしっかり作り込まれた、

“製作者の制作した意図をしっかり汲み取れる”

作品に仕上がっているといえるだろう。

各楽曲のクオリティーも高く、

作品としての構成もかなり出来上がっている、

秀作と呼ぶに相応しい作品です。

 

オススメ度 8.6

(ラップ:1.8 トラック:1.9 キャラ:1.7 話題性:1.4 構成:1.8)

 

 

 

 

2006年12月 5日 (火)

STRAIGHT OUTTA ...

金網のフェンスに有刺鉄線、

昼間から何するでもなくポーチにたむろする男達、

その前を車で通り掛ると、

彼らの視線は緊張を帯びた警戒心を剥き出しにして

こちらに突き刺さる。

ギャング同士のドライブ・バイが

ここでは日常的な出来事だということを

彼らのその痛いまでの視線が雄弁に物語っているのだ。

道一本間違えて迷い込んだCOMPTONのストリートは

正に想像以上の乾いた緊張感に支配されている。

リリックから浮かび上がったそのままの光景だ。

 

僕がこの一年ブログを続けてきた中で、

一番に力を入れて書きたいと思っていたのが、

この作品である。

THE GAME の2ND作、

「DOCTOR’S ADVOCATE」

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THE GAME

言わずと知れた、

時代の寵児。

デビューからまだ2年しか経っていないのだが、

その動向の一々に尾鰭が付き、

ゴシップのネタとして

絶えずシーンに足取りざたされてきた男が

様々な話題を引き連れたままドロップしたこの2ND作。

50 CENT との確執から、

とうとう偉大なる師、DREAFTERMATH を去ってまでして

独力で作り上げた本作を、

まずは純粋に2つの点で評価して

このレビューを進めていきたいと思います。

“ラップ”“ビート” について。。。

 

 

では、まず “ラップ” について。

今作と前作の決定的な違いは

このラップにある。

ここで挙げられるのは、

DRE のトータル・プロデュースの有無についての

その影響力を顕著に感じることが出来る。

唯でさえぶっきらぼうに吐き捨てるようなスタイルの

声の篭りがちな THE GAME のライミングは、

今作内において

かなりその傾向を強めている。

そのあたり、

やはり DRE の影響力の有無を感じずにはいられないのだが、

前作でギミックに括られ過ぎた THE GAME としては、

ラッパーとしての再評価に繋がる部分もあるのではなかろうか?

例えば、

本作を発表する以前の

THE GAME の動向に目を向けてみると、 

50 率いる G-UNIT 勢との熾烈な抗争において、

「300 BARS AND RUNNING」 を代表とする

数々のフリースタイルを発表し、

彼らを猛烈に攻撃すると同時に、

そのスキルに更なる磨きをかけていた。

つまり、本作は

前作でのギミックにまみれたキャッチーさと引き換えに、

よりコアでスキルフルな THE GAME のラップが

十二分に楽しめるというのだ。

確かに、

リリックに目を通していると、

L.A.賛歌、ギャングスタ賛歌は相変わらずとしても、

前作に見られないような、

より意味深長な深みのある内容を

そこに見出すことが出来る。

特に顕著なのが⑩、⑪、⑫の流れの中で、

シリアスな語りの⑩、

DRE への私信的な本音が述べられている⑪、

そして無情なCOMPTONのストリートを物語る⑫は

正に THE GAME の等身大の姿が映し出されたような

ある種の生命力に溢れたリリックを堪能できる。

もちろん、

得意のギミックにまみれたスキャンダラスなゴシップも

満面に鏤められて、

相変わらず聴いていて飽きない、

その面白味も彼の魅力の一部なのだが。

しかしながら、

やはりラップのパッケージングとしては、

DRE 不在のその影響としてか、

エフェクト仕事が多少雑なので、

先程も書いたように、

前作と比較すると聴き取り難いのが難点である。

 

続いて、“ビート” について。

何度も書いているが、

DRE のトータル・プロデュースがないのはもちろん、

DRE 自身の製作するビートも

本作には収録されていない。

しかしながら、

その辺りの影響は

全楽曲の構成を通してみても

さほど影響は内容に思われる。

確かに、前作の楽曲構成は

完璧に近い出来映えだったが、

今作のそれも前作に引けをとらない

すばらしい出来映えであると言えるだろう。

プロデューサー陣には、

前作に引き続き、

SCOTT STORCH

JUST BLAZE

KANYE WEST

HI-TEK らが参加。

更に新加入組としては、

BLACK EYED PEASWILL. I. AM

SWIZZ BEATZ

NOTTZ

最近活躍目覚しい “J.R. ”

D12MR. PORTER

それに西海岸色の濃厚な JELLYROLL らが参戦している。

順を追って解説していくと、

まず最初に耳を惹くのは

西海岸出身の DJ KHALIL の製作する②だ。

うねりが特徴の振れ幅のあるウワモノが

いかにもウェッサイな加工を施されていて、

ビビッドに映えている。

続く③は JUNIOR REID をゲストに迎えた、

本作からのファースト・カットとなる曲だが、

これは狙いすぎな所が耳について、

あまり好感が持てない。

今の所、本作からはこの③に続き、

SCOTT STORCH の製作した⑥、

KANYE WEST が製作し、

自らヴァースをキックした⑧が

シングルとして切られているが、

僕としてはあまりに妥当な選曲すぎて、

面白味を感じないでいる。

その点では、

本作内でインパクトの強い曲を押すなら

WILL. I. AM が製作し、

フックを担当する④はかなりパンチガ利いていて、

断然オススメできる。

特にイントロ部のとぼけたボーカルから、

THE GAME のシリアスなボーカルが重なる

そのコントラストがたまらなくカッコイイ。

ビート自体も、

最近、メジャーで大成功して以来、

そちらの方向性へ大きく偏った感のあった

BLACK EYED PEAS の作風がウソのように思えるほど、

ハードで硬派なのも気に入っている。

続く⑤も本作中、ハイライトとなりそうな曲で、

JUST BLAZE が製作、

泣く子も黙る、

ISAAC HAYS

「HYPERBOLICSYLLABLICSEQUEDALMISTIC」 使い。

これは PUBLIC ENEMY

「BLACK STEEL IN THE HOUR OF CHAOS」 でお馴染みのネタだが、

この曲もインパクトが強いので、

シングルで切っちゃえばいいのにと思ってしまう。

JUST BLAZE は時々、

信じられないくらい神掛かったカッコイイ曲を作り出す。

よく比較される KANYE WEST の最近の作品が

妥当な線に流れがちであるのに対し、

JUST BLAZE は決して実験的とまでは言わないが、

挑戦的な作風が目立っていて、

素晴らしいクオリティーを備えたモノが多いように思える。

前述のシングル曲⑥に続く⑦も

SCOTT STORCH 製作曲になる。

NATE DOGG の参加とタイトなオケが絶妙にマッチした

SCOTT STORCH 会心の一曲に仕上がっていて、

THE GAME のいきんだラップが良く映える

聴き応え充分の自己賛歌である。

KANYE 製作、参加のシングル曲⑧は、

前作の 「DREAMS」 に続く二人の相性の良さを

十二分に証明している。

続く、⑨は SWIZZ BEATZ 製作による曲になるのだが、

この曲も破壊力がスゴイ。

なんて太いビートなんだ。

あまりに色気がなさすぎてカッコよすぎる。

それにしても、

この曲での THE GAME のフロウは

エフェクトの加減もあるのだろうケド、

まるで NAS のそれのように聴こえる。

多分、ラップ・マニアの THE GAME としては、

NAS のフロウも多分に研究しているのだろう。

その影響が見え隠れしていてもおかしくはないハズである。

それにしても似ている。。。

“ラップ” の所でも触れた⑩、⑪、⑫の流れは、

“ビート” の観点から見ても

秀逸の楽曲が並んでいるといえるだろう。

まず、NOTTZ 製作の⑩に注目していただきたい。

NOTTZ は元々、BUSTA RHYMES 作品などで

注目を集めてきたプロデューサーだが、

印象としてはもっとはじけたようなビートのイメージがある。

しかしながらこの⑩では、

シックで流麗なループをシンプルに加工したオケが

リリックの詩情を描き立て、

世界観に抑揚のある深みを与えている。

実は僕が本作内で一番好きなのがこの⑩なのだが、

それこそ流麗なループはいくら聴いても聴き飽きないという

その事実を証明してくれている一曲である。

続く⑪は JONATHAN “J.R.” ROTEM 製作による曲。

前述したように、

THE GAMEDRE に送る

(あるいは SNOOP に送る)

私信的な楽曲なのだが、

リリック上に垣間見られる THE GAME の本心を

映し出したかのような憂慮に満ちたオケが

シリアスに映えている。

“J.R.” の名は昨今のメジャー作品中で

必ず目にするまでに、

現在売れっ子として大活躍している

若手筆頭のプロデューサーである。

若い頃からの音楽の基礎的な素養が出来ているだけに、

彼の生み出す楽曲は幅が広く、

構成がしっかりしているのが特徴だ。

続く⑫は HI-TEK 製作による楽曲。

最近、自身の2ND作を出したばかりの彼なのだが、

本当に音楽性の豊かな楽曲を作り出す。

この⑫も叙情に溢れるオケで、

THE GAME の紡ぎ出すストリートの物語を

情感タップリに彩っている。

SNOOPXZIBIT をゲストに招いたL.A.賛歌の⑬は、

“J.R.” 製作による楽曲。

SNOOPXZIBIT 両者ともに

同じく新作を発表したばかりだが、

THE GAME も含め、

三者三様のやり方で “WEST COAST HIP HOP復権”

目論んでいるのが良く分かる。

ちなみに、

SNOOP の新作にも、

XZIBIT の新作にも、

THE GAME はゲスト参加している。

このあたり、

THE GAME が前述の “WEST COAST HIP HOP復権”

担い手としていかに重要な役割を果たしているか?

ということが如実に現れていると言えるだろう。

続く⑭も DOGG POUND の二人をゲストに招いているあたり、

L.A.のGANG BANG色の強い楽曲に仕上がっている。

しかもプロデュースには JELLYROLL なのだから、

その耳当たりはモロだ。

MR. PORTER 製作、JAMIE FOXX 参加の⑮に続く最後の二曲、

JUST BLAZE 製作、NAS がゲスト参加した⑯と、

WILL. I. AM 製作、自身と FERGIE の参加した⑰は

個人的にはハッキリ言っていらなかった。

JUST BLAZEWILL. I. AM 二人とも、

先程大絶賛したばかりなので、

余計に残念である。

 

。。。。。

 

総評をまとめていこう。

本作についての評価の基準となるのが、

DRE 不在の影響が作品にどう作用しているか?!”

という点に集約されていると思うのだが、

“ラップ” の面では、

DRE 不在によりインパクトを損なうという

マイナス面も伺えはするのだが、

まあそれ以上に、

前作と比べてスキルフルなフロウが楽しめるし、

それ以前に、

個人的にあまり好きでない 50 のラップを

聴かされないで澄むというのがプラス点に繋がっている。

“ビート” の面においてこそ、

DRE 不在の影響が懸念されたのだが、

そんな心配もどこ吹く風といったところで、

今作も前作に劣らぬほどに完成度は高い。

DRE 不在でここまでできているのだから、

THE GAME の株も逆に上昇していると言えるだろう。

だが、

正直、前作ほどの魅力を感じなかったのも事実ではあるが。。。

 

オススメ度 9.3

(ラップ:1.7 トラック:1.9 キャラ:1.9 話題性:2.0 構成:1.8)

 

 

 

ちなみに、

彼の前作 「THE DOCUMENTARY」 の評価点は

オススメ度 9.7 (ラ:1.9 ト:1.9 キ:1.9 話:2.0 構:2.0)

でした。

これは当ブログの昨年 (2005年) の

ベスト・アルバム・ランキングで

1位の評価を与えています。

 

  

 

2006年10月25日 (水)

メジャーでパックされたDAZの力

今回は表題のとーり、

DAZ の新作、

「SO SO GANGSTA」 についての紹介を

したいと思います。

220pxso_so_gangsta   

 

 

 

 

 

 

 

 

まず、

DAZ について、

彼がコレまでドロップし続けていた作品群は

そのほとんどがインディーからの

ひどくヤクザな作品ばかりでした。

こう書くと、

コレまでの彼の作品が

まるで貶められたようにヒドイ、

下劣な仕上がりのように聞こえるかもしれませんが、

実はまったく逆です。

彼のそういった諸作品群の出来は、

そういったヤクザな作りも含めた上で、

頗る素晴らしく、

一種のスタイルとして成立させる

才能を煌かせていました。

それこそ下降線の一途を辿った

当時の DEATH ROW 所属時代も含めて、

彼は確かに

西海岸の裏番を張っていたと言えるでしょう。

そんな彼が久々に表舞台 (メジャー) に

帰ってくるという。

しかも、

唯の表舞台 (メジャー) じゃない。

それは全米を跨ぐ形で、

JERMAINE DUPRI が舵取りをする

南部の最重要レーベルの一つ、

SO SO DEF からなのである。

西海岸の裏番と南部の裏番が遭遇?!

HIP HOP好きなら

コレだけで三杯は飯が喰えるでしょう!!

・・・・・

・・・・

・・・

スミマセン、

つい興奮してしまいました。。。

ド頭の①から

ドラマティックなオケで勢い付けた DAZ

相変わらずの無骨でぶっきらぼうで、

それだけにイナタくイナセで、

噛み付く猛犬のごとき

独得のフロウが冴えまくっています。

プロデュースはシカゴの重鎮、

KANYE の師匠でもある NO I.D. なのだが、

彼の所属も SO SO DEF になっているって所に

とても驚かされた。

②はこの夏大ヒットを飛ばしたばかりの

マイアミの新人、

RICK RO$$ が参加している。

TIMBO 風のトリッキーな作りのオケは

御大 JERMAINE DUPRI 製作によるもの。

コレはドップリと南部流儀に染められた曲だ。

そして、

いつもの彼の作品に見られる

ドラスティックで抑揚の強い③は、

もちろん DAZ 本人の手による楽曲である。

またこういう曲に自分の声が

良く映えるのを分かってらっしゃる。

従来の DAZ ファンも、

この曲を聴けば文句は出なくなるだろう。

逆に、DAZ の声の勢いを殺さんばかりの

J.D. が作った④は、

それこそ DAZ 的には面白味に欠ける曲なのだが、

しかしこのネタ感の強い構成が

僕としては非常に好ましく思われる。

さすがというか、

上手いんですよ、このあたり。

自身が製作したスロウ・ダウンさせた曲調に、

SNOOPSOOPAFLY が参加する⑤は、

要するに D.P.G. 賛歌。

かなりユル~い作りで、

ここでは主役は SNOOP が頭一つ出ている。

続くネタ感の強い曲は

またまた J.D. 作のモノで、

これまたカッコイイのです。

ぜんぜん DAZ が目立っていないってのが

ミソとなっていて、

それでキチンと成立している不可思議さが

このアルバムの魅力の一端にもなっている。

仲直りして再びガッチリ組み合った、

盟友 KURUPT も、

⑦で当然のように参加していて、

SCOTT STORCH 製作曲の上で

そのコンビネーションの妙味を披露してくれています。

雑な作りだなーと思わせる⑧は

やはり DAZ 製作によるものだったが、

これが味となり、

武器となっているのだから、

DAZ のヤサグレ具合も

一種の職人芸の域です。

ICE CUBE の絡み方が

また非常にスバラシイです。

続く⑨の作りも、

前曲に劣らず粗い。

こちらもまた DAZ の手による曲となります。

そして、

作り込まれたネタ感の強い⑩はといえば、

やはり J.D. の手による曲となるのですが、

この曲は比較的に DAZ によくマッチしている。

続く JAGGED EDGE がフックを歌い上げる⑪も

J.D. によるモノで、

ハッキリ言って、

今までの DAZ 作品では見られなかったような

彼の未知だった新しい側面を引き出している。

素直にカッコイイです。

そして、最終曲となる

DAZ 製作の⑫で本作は幕を閉じています。

全12曲とボリュームは少ないのですが、

だからといって、

全編飽きさせない構成が敷き詰められていて、

僕個人としては

非常に楽しめる作品に仕上がっています。

それこそ J.D. の抜かりない目が、

作品の至る所に光っているのを

実感を伴って感じられる力作です。

DAZ の従来のスタイルを踏襲しつつも、

全国レベルへ押し上げる為に、

様々な仕掛けが仕組まれていて、

新たなファン獲得に

目敏くベクトルを向けられていますが、

それがイヤラシくないってのが、

J.D. のすごい所なのでしょう。

。。。。。

ココで比較するのもアレなんですが、

批判が多かった MOBB DEEP

G-UNIT からの作品と比べると、

DAZ の本作は

全然イケてると思います。

っていうか、

大成功だったのじゃないかと。。。

 

僕、この作品大好きです。

 

オススメ度 8.7

(ラップ:1.6 トラック:1.8 キャラ:1.7 話題性:1.7 構成:1.9) 

 

 

2006年10月 9日 (月)

小さな巨人

せっかくの三連休でしたが、

引っ越してまだ二週間ということで、

色々所用が重なっていたので、

ゆっくり過ごすことができませんでした。

時間を縫って更新用の記事を

ちょこちょこ書きつつしているのですが、

先週の火曜に買ったばかりの新譜10枚分、

実はまだ一枚も聴けていません。。。

元々、新譜に対して、

購入した時点で満足感を覚えてしまっているので、

そういった意味で

本当にコレクター癖が強いということが

自身で実感できます。

まだ二枚分のレビューを書かないといけないので、

それが終わるまでは

聴く暇もなさそうです。。。

一体、何なんでしょうね・・・?

 

さて、

今日は残り二枚の内の一枚、

TOO $HORT の新作、

「BLOW THE WHISTLE」 について

書いていきたいと思います。

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そのキャリアは古くから、

ベイ・エリアのみならず、

全国区でその名を馳せる TOO $HORT

オリジナルのスタイルを早くから確立し、

多くの模倣者を生み出した

一種のカリズマでもある彼ですが、

実は僕、

彼は結構苦手でして、

これまでほとんど彼の作品に触れてこなかったってのが

本当の所です。。。

そんな僕が偉そうに

彼の作品をあれこれ批評するなんて

おこがましいとは思いますが、

まあとにかく筆を進めます。

 

甲高いオモチャ声で

“元祖PIMPスタイル” を標榜してきた彼の

一体何が気に入らなかったのか?

それは自分でも分かりませんが、

先程も書いたように、

僕はコレまでの彼の作品群のそのほとんどを

耳にせずにきました。

もちろん、

BIGGIE の作品や、

同じく古くからベイ・エリアをレペゼンしている

E-40 などの作品において

ゲスト参加してる TOO $HORT の姿は

確かに認識しているのですが。。。

自分でも不思議に思いながら

本作を聴き進めていくと、

“BITCH BITCH” した①からして

いきなり彼らしいスタイルで幕を開けていきます。

なんだかここまでくると

伝統芸能の域だな。。。

とか何とか思いながら、

E-40 の時もそうだが、

同じ西海岸でもL.A.とベイ・エリアでは

作品の広がり方に違いが見られるのですが、

その顕著な表れとして、

ベイ・エリアのアーティストと

南部のアーティストの交流があります。

それこそ E-40 の新作にも

重要に位置を占めて参加していたのが

南部 CRUNK の帝王、

LIL JON だったが、

TOO $HORT の本作でも

彼の名は多く見られる。

全16曲中、

②、③、⑥、⑬、⑮、⑯の6曲の

楽曲製作を手掛けています。

更には、

最近の南部系作品では必ずお目に掛かる

JAZZE PHA

⑤、⑦、⑧、⑨、⑩、⑪と

これまた6曲分の楽曲製作に携わっており、

これだけ見ても、

本作がいかに南部寄りに製作されたかが

如実に現れている。

なのに、

土俵は完全に TOO $HORT が支配しているという

このマジックに驚かざるを得ない。

さすが “小さな巨人” TOO $HORT

存在感が凄すぎです。

個人的には、

LIL JON との相性より、

エッジの効いた音の立つ

JAZZE PHA との相性の方が好みです。

確かに、

本作をはじめ、

昨今の諸作品で頻繁に活躍している

JAZZE PHA の音を聴いていると、

その絶頂期を思わせるほどに

彼は今、絶好調ですね。

特にせわしないカンジの⑦や

レイドバックした⑧などは大好物です。

ちなみに、

本作のEXECUTIVE PRODUCERには

LIL JON の名が並んでいるのだけど。。。

 

本作のゲスト陣について書くと、

これまた豪華で、

変わりどころで、

④をプロデュースした

今やポップ・アイコンとなった

BLACK EYED PEASWILL. I. AM が、

SNOOP と共にそのままゲスト参加している他、

前述、LIL JON 製作の⑥に

南部の重鎮と新人、

U.G.K. PIMP CRICK RO$$ が、

JAZZE PHA 製作の⑪では

同じく U.G.K.BUN B

JAZZE PHA と共に参加している。

⑫の DAVID BANNER との共演も珍しいが、

あえて、

同じ西海岸を代表する

KURUPTDAZ のコンビとの

LIL JON 製作曲上での競演は

なぜか新鮮です。

そして先にも何度もその名を挙げた

ベイ・エリアを二分する巨頭の一人、

E-40 の参加する⑭での

それこそ E-40 のキレ具合がたまりません。

 

古くから守り続けていた

TOO $HORT のマナーと、

新しいシーンの流れとの融合を

見事にまとめ上げた作品として、

あまり彼に馴染みのない僕としても、

ある種の感動を以って迎え入れた作品になります。

さすがベテラン、

ブレてない。。。

 

オススメ度 8.0

(ラップ:1.5 トラック:1.6 キャラ:1.7 話題性:1.5 構成:1.7) 

 

 

2006年8月24日 (木)

夏にピッタリ!ROSCOE のCALI気分

夏にピッタリ!

・・・だなんて、

8月も終盤に入って

今更なんだけれど、、、

6月くらいに買った作品を

今日は紹介したいと思います。

 

ROSCOE の新譜、

「I LUV CALI」 です。

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ROSCOE というと

僕的にはCALIFORNIAのイメージよりは、

出身地、PHILADELPHIAの印象の方が

断然強かったりするんだけど。。。

ご存知の方もいらっしゃると思いますが、

彼、ROSCOE は、

何といってもまず、

KURUPT の弟ということで

その名が知れ渡っています。

確か、デビュー時も

KURUPT の全面的なバックアップを受けていましたね。

当時、僕はL.A.に住んでいたのですが、

CALI色の強い彼のファースト・カットを

よくラジオなどで耳にしていたのを思い出します。

そういやアレも

ちょうど夏真っ盛りの頃だったな。。。

 

ROSCOE のデビュー作、

「YOUNG ROSCOE PHILLAPHORNIA」

その名からも分かるように、

彼の出身地、PHILLYと、

兄を追って渡ったCALIFORNIAの

両地のエッセンスを含んだ作品に仕上げられている。。。

という名目なんだけど、

僕の印象としては、

どちらかと言うと、

PHILLY寄りな印象が強かったな。

ラップの印象は、

さすがに KURUPT 程スキルフルではない。

どちらかというと、

相棒 DAZ に似た直情型のラップで、

ゴリゴリ押す方がカッコよく映えるタイプだ。

そんな ROSCOE のデビュー作は、 

KURUPT の舵取りで

なかなかしっかり作り込まれた作品ではあったケド、

大ブレイクとまではいかなかった。。。

 

それが、

アレから四年の時を経て、

ROSCOE もすっかり兄離れし、

ドップリとCALIFORNIAに漬かっちまった。

そりゃあそうさ。

生活するなら

CALI程スバラシイ場所はないからね。

 

。。。。。

 

というワケで、

ようやくココから

本作の解説に入っていくのですが、

まず結論から言うなれば、

本作程に

WEST COAST流儀に括った作品は

昨今では珍しい。。。

言葉は悪いが、

“時代錯誤” だなあ・・・というのが、

まず僕の感想だ。

メロウでレイドバックしたオケを

これでもかっ?!と取り揃えたラインナップ。

今時、生粋のL.A.っ子だって

こんなマネはできないであろう。

それは ROSCOE

WEST COAST HIP HOP に対する

ある種の情熱、

あるいは、

執着、固執した表現といっても過言ではない。

本作において

高々とウェッサイ流儀を標榜した ROSCOE の姿は、

しかしながら、

それはそれで

逆に潔しと捉えることもでき、

古くからのウェッサイ・ファンならば

メランコリックな感慨を以って

本作を楽しむことができるのではないだろうか?

 

では、

ここから各楽曲をかいつまんで紹介していこう。

。。。。。

まず、

イントロの①からP-FUNK調全開で、

オマージュ感タップリな幕開けなのだが、

その展開をまんま引き摺った形の②の

なんというサマー・チューンっぷりであろう!?

あまりにベタ過ぎる展開に

コチラも気恥ずかしさを覚えそうなのだが、

とりあえず、

そいつはあえて無視して

そのまま先に進めよう。。。

続く③の扇情的なラテン調の上モノのループも

実にベタな印象なのだが、

形振り構ってないカンジの ROSCOE

逆にカッコよく思えてきたりもしてくる。

一昔前の

WEST COASTを代表するラッパーの

作品のどれかに紛れ込んでいても

おかしくないような④などを経て、

⑦でも、

思いっきりメロウなギター・ラインを取り入れた

西海岸流儀を披露している。

そんな⑦以上に、

更にトロけるくらいスウィートでメロウなのが⑨だ。

ここまでくると、

ヘタなR&B曲より甘ったるいのだから、

その本腰の入った取り組み様に

改めて舌を巻く思いである。

②に続き、

曲丸ごと全編P-FUNK調に仕立て上げられた

⑫を聞いていると、

シーンの流行を丸っきり無視した

爽快ささえ味わえる。

攻撃的な⑬は

ボトムの唸り具合がステキだ。

少し芝居がかった印象が鼻に付く⑭を経て、

オリエンタルな上モノのループに

展開の速いラップがよく映えた⑮、

いきなり別世界にブッ飛んだかのような

レイドバック感を見せつける⑯。。。

と、作品終盤にきて

尚、その時代錯誤な作風に拍車を掛けるあたり、

半端な作品には見られない

一本筋の通った気骨を感じる程だ。

そして、

最終曲⑱の

ユル~いオケ上で定番のピース。。。

 

。。。。。

 

とまあ、

全体を駆け足で解説していったのだが、

本作の特色ともいうべきは、

何といっても、

全楽曲の製作を FINGAZZ なる人物が

担っているという点に挙げられる。

この FINGAZZ なる人物、

実は知る人ぞ知る、

チカーノ・HIP HOPの重鎮らしい。

どーりで作品全体を占める雰囲気が

そっちの方向にベクトルを傾けすぎていると思った。。。

この FINGAZZ

元々 KURUPT との親交からのラインで繋がっており、

ROSCOE のデビュー作でも

彼は一曲手掛けている。

ドップリとL.A.に漬かった ROSCOE をして、

“I LUV CALI” と標榜するのだから、

それに見合ったビートとなると、

やはり今作での FINGAZZ との組み合わせは

最適なのかもしれない。

 

・・・・・

 

この作品をボンヤリ聞いていると、

あのクソ暑い夏の夕暮れ、

DOWN TOWN L.A.からLONG BEACHへ、

710Fwyを駆る車窓から眺める

夕焼けに染まった低い街並の光景を

思い浮かべてしまう。。。

 

ハッキリ言って、

この作品は

そういう音楽で詰まっている。

 

オススメ度 7.1 

(ラップ:1.4 トラック:1.7 キャラ:1.2 話題性:1.1 構成:1.7) 

 

 

2006年7月29日 (土)

西海岸よ、永遠なれ!

今日紹介するのは、

HIP HOP WEST COAST の復権を

一身に担っている、

SNOOPDAZ KURUPT からなる伝説のユニット、

THA DOGG POUND

復縁第一弾作品、

「CALI IZ ACTIVE」 です。

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THA DOGG POUND

D.P.G. Dogg Pound Gangsta

あるいは、

D.P.G.C Dogg Pound Gangsta Clique 

違いは何だ?

と悩まれてる方に簡単に説明をしておきましょう。

まず、THA DOGG POUND とは

DAZKURUPT そして SNOOP の三人からなる

トリオとしてのユニット名になります。、

続いて、D.P.G. とは、

DAZKURUPT の二人で組んだ

デュオとしてのユニット名になり、

最後の D.P.G.C.

DAZKURUPTSNOOP を中心に、

WARREN GNATE

RBXTRAY DEEE GOLDIE LOC

BAD AZZE-WHITESOOPAFLY 他、

果ては ROSCOE から XZIBIT に至るまで(!)、

ウェッサイ好きには涎モノの名が

ズラ~っと連なる大所帯のユニットの

グループ名がそれにあたります。

ちなみに、

以前、このブログで紹介したのは

D.P.G. 名義での作品 で、

空中分解状態だった彼らが再び結束し合い、

ユニットとしてリユニオンを果たした

第一弾目の復帰作でした。

 

本作の内容を紐解いていくと、

全16曲中、

DAZ がプロダクションを手掛けた曲ってのが

一曲もないってのがまずもって驚きだ。

代わりに BATTLECAT SOOPAFLY

二本柱で奮闘しています。

この二人の名を目にするのは久しぶりで、

何だかとっても懐かしい。

珍しいところでは SWIZZDAVID BANNER

JAZZE PHAE がそれぞれ一曲ずつ参加していますが、

その中でも、

何と言っても SWIZZ 製作の③は

すごく目立っています。

SWIZZ お得意のアッパー系の楽曲に

ゴリ押しでくる DAZ のフックがすごく映えていて、

際立って耳を惹きます。

かつての “ウェッサイ・マナー” を髣髴させる④に続いて、

⑤では異色のゲスト、

BAD BOY の総帥 DIDDY を招いています。

よくよく考えれば、

かつて D.P.G. の所属する DEATH LOW

この DIDDY 率いる BAD BOY

かなりシリアスなビーフを抱えていたのだから、

アレから十年近く経って

このコラボレートを目にすると、

何だか不思議な気分がしてしまいます。

まあ、この曲に関して言えば、

DIDDY のラップのヘタクソさが目立ってしまって、

あまり好ましい結果は生んでいないのだけど。。。

ユルくてイナタい⑨には RBXNATE が参加。 

D.P.G.C. の独特の世界観が見事に展開されています。

続く⑩は個人的には本作中一番注目の曲。

BATTLECAT の作るアグレッシヴなオケに

今となっては珍しい SNOOP の攻撃的なラップが

すごく刺激的でカッコイイ。

DAZ の煽り方がまた素晴らしく、

それに触発される形で

久々に SNOOP のギャングスタ魂に火が付いたカンジ。

流れで曲調の攻撃性を継いだ、

まるで TIMBO 調な⑪は

実は DAVID BANNER 製作による楽曲。

クレバーなカンジでコレもいいゾ。。。

フックでの DAVID BANNER の働き方が

これまた拍手モノでいいです。

⑫でも RBX NATE が再び登場し、

不穏なビート上で小慣れたマイクリレーを展開していく。

続く⑬は MIKE JONES がゲスト参加。

ユル~いビート上での MIKE JONES のラップって

何だか彼がすごく上手く思えてきちゃうから不思議です。

 

とまあ、

ゲストを中心に曲紹介していきましたが、

ここに挙げてない曲も

皆、すこぶる調子良い。

改めて思わされるのは、

やはり DAZ KURUPT のコンビネーションは最強だ!

ってコトで、

そこに SNOOP が加わり醸し出される全体の雰囲気が

本当にたまらない。

これぞ西海岸流儀そのもの。

ただ、彼らの魅力でもあった

“擦り切れるくらい研ぎ澄まされた

圧迫されたギャングスタ・ライフの緊張感”

って空気は、

悲しいかな、

希薄になってしまったというのもやはり事実です。

・・・・・

まあ、コレばかりはしょうがないか。

でも、

作品としては非常にバランスがよく、

全体としてのまとまりや、

各楽曲ごとで見ても品質が高いので、

エンターテイメントとして素晴らしい出来映えだと思います。

西海岸復権を模索する彼ら、

L.A.が再びHIP HOPの中心に

返り咲くことはあるのでしょうか?

彼らのこれからの展開が益々楽しみです。

 

オススメ度 8.3 

(ラップ:1.8 トラック:1.7 キャラ:1.6 話題性:1.5 構成:1.7) 

 

2006年7月22日 (土)

4 MC's + 2 DJ's - 1 DJ 。。。

最近 “新譜紹介” と称して

一ヶ月も二ヶ月も前にドロップされた作品を

ここに書いていることに

少々心苦しい気もしないではない。

なので、今回はちょっと意気込んで、

三日前に買ったばかりの

ドロップしたてホヤホヤの新譜から紹介したいと思います。

 

というワケで、

タイトルから推察された方は

もうお分かりですね?

今回紹介するのは

JURASSIC 5

四年振りとなる新作、

「FEEDBACK」 です。

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まず本作について述べる際に、

どうしても触れなくてはならないのが

メンバーDJの一人、

CUT CHEMIST のグループ脱退についてです。

今回のブログのタイトルにも書いたように、

JURASSIC 5 = 4 MC's & 2 DJ's” という

このメンバー構成が

まず何よりも彼らの魅力でした。

これはつまり、

HIP HOP 黎明期における

パーティー・スタイルを正統的に継承した

グループ構成になります。

どうしてもMC主導でメディアに取り上げられる

昨今の米HIP HOPシーンにおいて、

彼ら、JURASSIC 5 の目指す

HIP HOP原点回帰的な活動が

注目を集めるのは必然的ですが、

その期待にたがわぬ

メンバー各人のスキルの高さも

このグループの人気の高さに繋がっています。

中でも注目されていたのが

DJ の CUT CHEMIST でした。

超絶的なDJスキルを駆使しての

実験的なサウンド・プロダクションで知られる

CUT CHEMIST のソロ作品に対して、

しばらく前からシーンの注目が集まっていたのですが、

それに対して彼の出した答というのが、

“グループとして活動を続けていく上で

ソロ作品の製作と両立させることはできない” という

思いがけないグループ脱退の決断と、

そして本作と時期を同じくして発表された

ファースト・ソロ・アルバム

「THE AUDIENCE'S LISTENING」 でした。

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このニュースはファンにとって

複雑な心境だったのではないでしょうか?

“確かに CUT CHEMIST

ガッツリ作りこまれたソロ作品は聴きたい。。。

しかし、彼がメンバーを抜けるのは辛い。。。”

 

とにかく、

前作から四年、、

その間、CUT CHEMIST の脱退を経ての

JURASSIC 5 待望の三作目が

この 「FEEDBACK」 になります。

当然、本作には

一切 CUT CHEMIST は参加しておりません。

。。。。。

 

で、そういったバック・グラウンドを含めた上で、

本作はどんなカンジやねんな?

と探り探りで傾聴していくと、、、

何の心配するコトはない。

いつもの彼らの作品に通ずる

安定したクオリティーの高さが感じられます。

ライブが売りの彼らにとって、

躍動感溢れる楽曲のダイナミズムも

損なわれることなく漲っていますし、

実際、ライブで映えそうな曲がギッシリ詰まっています。

CUT CHEMIST の抜けた穴を

残った DJ NU-MARK

獅子奮迅の活躍を持って購っています。

全15曲中、9曲が

NU-MARK の手によるモノなのですが

(①、⑤、⑦、⑧、⑩、⑪、⑫、⑬、⑮) 、

それらのミニマルなプロダクションが

実に冴えに冴えまくっている。

特に、

いかにも J 5 らしい楽曲の⑤や、

軽妙なループの素晴らしい⑩や⑬は、

楽曲の構成が実にタイトで、

それこそサンプリングの妙味を充分に堪能できます。

フックに MOS DEF が参加した

フリーキーな印象の強い⑧もまとまり方が素晴らしい。

そんな NU-MARK 製作曲の中でも

特に異彩を放っているのが⑦と⑮です。

先行カットとなる⑦は、

DAVE MATTHEWS BAND との共演による楽曲なのだが、

オルタナティヴなオケが

JURASSIC 5 としては目新しいハズなのに、

MC陣のラップが妙にハマっています。

そして、更に異色なのが⑮!

これはインスト曲になるのだが、

ボサノバのギターとピアノをオケにした

爽やかな楽曲で、

聴き応え充分です。

他にも、

NU-MARK 以外の外部プロデューサーによる曲でいえば、

SALAAMREMI が②、⑨、⑭の三曲、

SCOTT STORCHBEAN ONE

EXILE がそれぞれ一曲を担当。

確かに、彼ら外部プロデューサーによる楽曲は

そのどれも J 5

これまでの路線にはなかったような楽曲ばかりで、

少し面食らってしまった感じもしないではない。

特に SCOTT STORCH の手掛ける③は

そのキャッチーさがメジャー・シーン寄りな楽曲で、

アルバム全体からしても浮いてしまっているのだけれど、

仕上がりが良いので嫌味になっていないのは

さすが、今勢いのある SCOTT STORCH の仕事だ、

と逆に感心してしまう。

BEAN ONE 製作の④も

CURTIS MAYFIELD の声ネタを使った

キャッチーな楽曲なのだが、

4 MC'sの落ち着いた語り口によるラップが

よく映えた作りになっていて、

これも嫌味のない仕上がりになっている。

EXILE の作る⑥で聴ける

CHALI 2NA の早口ラップが

レアなカンジがしてオモシロイなあ。

実力派の SALAAMREMI もやはり

どちらかといえばメジャー・シーン寄りな楽曲になるのだが、

OLD SCHOOLライクな②、

MARVIN GAYE の声ネタをスパイスにした⑨、

そして、穏健で伸びやかなオケが特徴的な⑭と、

J 5にとって新展開を想像させるような、

そんな楽曲を送り込んでいる。

 

総じて、

新機軸を展開しつつ、

且つ、全編を通しての一貫したスタイル保持を

可能たらしめているのは、

何より彼らの

HIP HOPに対する愛情、

HIP HOPとの距離、

HIP HOPの概念が

明確に打ち立てられているからだ。

CUT CHEMIST が抜けた影響からか、

スクラッチやターンテーブリストの技みたいなモノを

少し物足りなく感じるところもあったが、

作品としてのまとまりと重厚感、

それにパーティーやLIVEがしっかり詰まった点から見ても、

本作は前二作に劣らぬ力作だと言えます。

僕は彼らのコトを

“HIP HOPの良心を継ぐ最後のグループ”

だと思っているが、

本作はそれをキッチリ証明してくれている。

 

オススメ度 8.2 

(ラップ:1.5 トラック:1.8 キャラ:1.6 話題性:1.5 構成:1.8) 

 

 

ちなみに、

CUT CHEMIST は完全脱退というのではないらしいので、

いつか復帰する可能性もあるようです。

そうあったらいいな。。。

ぜひ、そうあるべきだな。。。

 

2006年7月20日 (木)

怒れる10時10分の男

今日紹介する新譜は、

タイトルにもあるように、

かつて “10時10分の眉を持つ男” として

西海岸及び、全米を席巻した

怒れる代弁者、

ICE CUBE の新作、

「LAUGH NOW , CRY LATER」 です。

Laughnow  

 

 

 

ICE CUBE のソロ作品として8作目にあたる本作は、

前作から6年の期間を経てのドロップとなりました。

映画俳優としての彼の活躍を見ていると、

この6年間という時の経過も

そんなに長くブランクを感じさせないですね。

(合間に WESTSIDE CONNECTION としての作品も

ドロップしているし、、、)

 

シリーズものとして発表された

前々作と前作 「WAR & PEACE - VOL. 1, 2 - 」

個人的には消化不良なカンジで

あまり楽しめなかったのですが、

その辺り、

やはり俳優業に勤しんでいる CUBE

片手間な雰囲気が感じられなくもない。。。

とかなんとか勝手に分析していたのですが、

さて、

今作はどんなカンジやろかいな?

僕としては、

CUBE や、

彼と同じく俳優業に勤しんでいる L.L. COOL J の作品は

今更ながらにどうしても色眼鏡で見てしまうのです。。。

さあ、どんなカンジ?!

  

というワケで、

いきなり疑り深く耳をそばだてて

作品を傾聴していったのですが、

結論から言って、この作品、

なかなか良いです。

どこが良いって、

まずそれぞれの楽曲のプロダクションが粒立っていて、

単純にカッコイイ。

それに、作品としてのまとまりもしっかりしている。

前作、前々作に見られたような

飽和した雰囲気はまったく見られません。 

粒立った各楽曲は

それぞれに方向性の違うベクトルが

伸びやかに備わっているのですが、

それが乱雑に混在するのではなくて

バランスをとって共存して

本作のテーマをしっかり構築しています。

楽曲単位で感想を述べていくと、

まず、和モノのオケがエキセントリックな③が

いきなり強く耳を惹きます。

CUBE のラップは粘りつくような声質と

語尾を引っ張るようなライミングが特徴的なので、

こういったアブストラクトな楽曲との相性が

非常に良いです。

チープなループが妙に耳障りの良い⑦も

CUBE のラップがよく映えていてカッコイイ。

続く、アルバム・タイトルを冠する⑧のループも

飄々としていて、

派手さは全然ないのだけど、

そのタイトさが無性に心に染み入ります。

⑩は LIL JON 製作楽曲に

彼と SNOOP が参加した、

本作の中でもハイライトとなる曲です。

LIL JON の作る攻撃的なプロダクションが

CUBE の攻撃性を引き立てていて、

その相性の良さを見事に反映させています。

それにしてもこの曲、

すごく完成度が高い。

さすが LIL JON 仕事といったところか。。。

この曲が作品全体のイメージに及ぼす影響力の強さが

その完成度の高さからも伺えると思います。

続く、GREEN LANTERN 製作の⑪も、

これまたカッコイイ出来映え。

ストイックなオケが

CUBE の良い意味での“負”の面を引き立てていて、

それが屈託なく伸びやかに

アルバムを掘り下げています。

GREEN LANTERN といえば

“元 EMINEM のライブDJ” として知られていますが、

離脱して逆にシーンの色んなところで

その活躍が見られるようになっていますね。

今回のこの仕事からも、

彼の今後の活躍が期待されます。

都会的な情景を叙情味タップリに描いた

ドラマティックな展開の楽しめる⑬に続く、

ドラスティックなオケの⑭は

EMILE なるプロデューサー製作によるものです。

この EMILE

先程紹介した⑦のプロデュースも手掛けているのですが、

他にも最近ドロップされたアーティストの新譜内に

その名を見かけており、

今、個人的に大注目している

新進気鋭の若手プロデューサーの一人です。

⑰の製作は SCOTT STORCH によるもので、

さすがにその実力の安定した仕事をしています。

 

総評としては、

HOLLYWOOD然とした

いささか劇画的に過ぎるトータル・パッケージも、

各楽曲のクオリティーの高さを考えれば、

許容範囲内として収めることができます。

濃厚なストリート色はその分褪せてしまいますが、

綿密に紡ぎ出された作品として

完成度の非常に高いエンターテイメントを

堪能することができ、

それ程期待していなかっただけに、

僕個人としては本作を事の他高く評価しています。

コアな ICE CUBE ファンには

物足りないかもしれませんが、

その分、HIP HOP 初心者達にぜひお勧めしたい作品です。

 

オススメ度 8.0 

(ラップ:1.4 トラック:1.7 キャラ:1.6 話題性:1.5 構成:1.8)

  

 

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