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2006年12月 5日 (火)

STRAIGHT OUTTA ...

金網のフェンスに有刺鉄線、

昼間から何するでもなくポーチにたむろする男達、

その前を車で通り掛ると、

彼らの視線は緊張を帯びた警戒心を剥き出しにして

こちらに突き刺さる。

ギャング同士のドライブ・バイが

ここでは日常的な出来事だということを

彼らのその痛いまでの視線が雄弁に物語っているのだ。

道一本間違えて迷い込んだCOMPTONのストリートは

正に想像以上の乾いた緊張感に支配されている。

リリックから浮かび上がったそのままの光景だ。

 

僕がこの一年ブログを続けてきた中で、

一番に力を入れて書きたいと思っていたのが、

この作品である。

THE GAME の2ND作、

「DOCTOR’S ADVOCATE」

200pxthegamedoctorsadvocate  

 

 

 

 

 

 

  

THE GAME

言わずと知れた、

時代の寵児。

デビューからまだ2年しか経っていないのだが、

その動向の一々に尾鰭が付き、

ゴシップのネタとして

絶えずシーンに足取りざたされてきた男が

様々な話題を引き連れたままドロップしたこの2ND作。

50 CENT との確執から、

とうとう偉大なる師、DREAFTERMATH を去ってまでして

独力で作り上げた本作を、

まずは純粋に2つの点で評価して

このレビューを進めていきたいと思います。

“ラップ”“ビート” について。。。

 

 

では、まず “ラップ” について。

今作と前作の決定的な違いは

このラップにある。

ここで挙げられるのは、

DRE のトータル・プロデュースの有無についての

その影響力を顕著に感じることが出来る。

唯でさえぶっきらぼうに吐き捨てるようなスタイルの

声の篭りがちな THE GAME のライミングは、

今作内において

かなりその傾向を強めている。

そのあたり、

やはり DRE の影響力の有無を感じずにはいられないのだが、

前作でギミックに括られ過ぎた THE GAME としては、

ラッパーとしての再評価に繋がる部分もあるのではなかろうか?

例えば、

本作を発表する以前の

THE GAME の動向に目を向けてみると、 

50 率いる G-UNIT 勢との熾烈な抗争において、

「300 BARS AND RUNNING」 を代表とする

数々のフリースタイルを発表し、

彼らを猛烈に攻撃すると同時に、

そのスキルに更なる磨きをかけていた。

つまり、本作は

前作でのギミックにまみれたキャッチーさと引き換えに、

よりコアでスキルフルな THE GAME のラップが

十二分に楽しめるというのだ。

確かに、

リリックに目を通していると、

L.A.賛歌、ギャングスタ賛歌は相変わらずとしても、

前作に見られないような、

より意味深長な深みのある内容を

そこに見出すことが出来る。

特に顕著なのが⑩、⑪、⑫の流れの中で、

シリアスな語りの⑩、

DRE への私信的な本音が述べられている⑪、

そして無情なCOMPTONのストリートを物語る⑫は

正に THE GAME の等身大の姿が映し出されたような

ある種の生命力に溢れたリリックを堪能できる。

もちろん、

得意のギミックにまみれたスキャンダラスなゴシップも

満面に鏤められて、

相変わらず聴いていて飽きない、

その面白味も彼の魅力の一部なのだが。

しかしながら、

やはりラップのパッケージングとしては、

DRE 不在のその影響としてか、

エフェクト仕事が多少雑なので、

先程も書いたように、

前作と比較すると聴き取り難いのが難点である。

 

続いて、“ビート” について。

何度も書いているが、

DRE のトータル・プロデュースがないのはもちろん、

DRE 自身の製作するビートも

本作には収録されていない。

しかしながら、

その辺りの影響は

全楽曲の構成を通してみても

さほど影響は内容に思われる。

確かに、前作の楽曲構成は

完璧に近い出来映えだったが、

今作のそれも前作に引けをとらない

すばらしい出来映えであると言えるだろう。

プロデューサー陣には、

前作に引き続き、

SCOTT STORCH

JUST BLAZE

KANYE WEST

HI-TEK らが参加。

更に新加入組としては、

BLACK EYED PEASWILL. I. AM

SWIZZ BEATZ

NOTTZ

最近活躍目覚しい “J.R. ”

D12MR. PORTER

それに西海岸色の濃厚な JELLYROLL らが参戦している。

順を追って解説していくと、

まず最初に耳を惹くのは

西海岸出身の DJ KHALIL の製作する②だ。

うねりが特徴の振れ幅のあるウワモノが

いかにもウェッサイな加工を施されていて、

ビビッドに映えている。

続く③は JUNIOR REID をゲストに迎えた、

本作からのファースト・カットとなる曲だが、

これは狙いすぎな所が耳について、

あまり好感が持てない。

今の所、本作からはこの③に続き、

SCOTT STORCH の製作した⑥、

KANYE WEST が製作し、

自らヴァースをキックした⑧が

シングルとして切られているが、

僕としてはあまりに妥当な選曲すぎて、

面白味を感じないでいる。

その点では、

本作内でインパクトの強い曲を押すなら

WILL. I. AM が製作し、

フックを担当する④はかなりパンチガ利いていて、

断然オススメできる。

特にイントロ部のとぼけたボーカルから、

THE GAME のシリアスなボーカルが重なる

そのコントラストがたまらなくカッコイイ。

ビート自体も、

最近、メジャーで大成功して以来、

そちらの方向性へ大きく偏った感のあった

BLACK EYED PEAS の作風がウソのように思えるほど、

ハードで硬派なのも気に入っている。

続く⑤も本作中、ハイライトとなりそうな曲で、

JUST BLAZE が製作、

泣く子も黙る、

ISAAC HAYS

「HYPERBOLICSYLLABLICSEQUEDALMISTIC」 使い。

これは PUBLIC ENEMY

「BLACK STEEL IN THE HOUR OF CHAOS」 でお馴染みのネタだが、

この曲もインパクトが強いので、

シングルで切っちゃえばいいのにと思ってしまう。

JUST BLAZE は時々、

信じられないくらい神掛かったカッコイイ曲を作り出す。

よく比較される KANYE WEST の最近の作品が

妥当な線に流れがちであるのに対し、

JUST BLAZE は決して実験的とまでは言わないが、

挑戦的な作風が目立っていて、

素晴らしいクオリティーを備えたモノが多いように思える。

前述のシングル曲⑥に続く⑦も

SCOTT STORCH 製作曲になる。

NATE DOGG の参加とタイトなオケが絶妙にマッチした

SCOTT STORCH 会心の一曲に仕上がっていて、

THE GAME のいきんだラップが良く映える

聴き応え充分の自己賛歌である。

KANYE 製作、参加のシングル曲⑧は、

前作の 「DREAMS」 に続く二人の相性の良さを

十二分に証明している。

続く、⑨は SWIZZ BEATZ 製作による曲になるのだが、

この曲も破壊力がスゴイ。

なんて太いビートなんだ。

あまりに色気がなさすぎてカッコよすぎる。

それにしても、

この曲での THE GAME のフロウは

エフェクトの加減もあるのだろうケド、

まるで NAS のそれのように聴こえる。

多分、ラップ・マニアの THE GAME としては、

NAS のフロウも多分に研究しているのだろう。

その影響が見え隠れしていてもおかしくはないハズである。

それにしても似ている。。。

“ラップ” の所でも触れた⑩、⑪、⑫の流れは、

“ビート” の観点から見ても

秀逸の楽曲が並んでいるといえるだろう。

まず、NOTTZ 製作の⑩に注目していただきたい。

NOTTZ は元々、BUSTA RHYMES 作品などで

注目を集めてきたプロデューサーだが、

印象としてはもっとはじけたようなビートのイメージがある。

しかしながらこの⑩では、

シックで流麗なループをシンプルに加工したオケが

リリックの詩情を描き立て、

世界観に抑揚のある深みを与えている。

実は僕が本作内で一番好きなのがこの⑩なのだが、

それこそ流麗なループはいくら聴いても聴き飽きないという

その事実を証明してくれている一曲である。

続く⑪は JONATHAN “J.R.” ROTEM 製作による曲。

前述したように、

THE GAMEDRE に送る

(あるいは SNOOP に送る)

私信的な楽曲なのだが、

リリック上に垣間見られる THE GAME の本心を

映し出したかのような憂慮に満ちたオケが

シリアスに映えている。

“J.R.” の名は昨今のメジャー作品中で

必ず目にするまでに、

現在売れっ子として大活躍している

若手筆頭のプロデューサーである。

若い頃からの音楽の基礎的な素養が出来ているだけに、

彼の生み出す楽曲は幅が広く、

構成がしっかりしているのが特徴だ。

続く⑫は HI-TEK 製作による楽曲。

最近、自身の2ND作を出したばかりの彼なのだが、

本当に音楽性の豊かな楽曲を作り出す。

この⑫も叙情に溢れるオケで、

THE GAME の紡ぎ出すストリートの物語を

情感タップリに彩っている。

SNOOPXZIBIT をゲストに招いたL.A.賛歌の⑬は、

“J.R.” 製作による楽曲。

SNOOPXZIBIT 両者ともに

同じく新作を発表したばかりだが、

THE GAME も含め、

三者三様のやり方で “WEST COAST HIP HOP復権”

目論んでいるのが良く分かる。

ちなみに、

SNOOP の新作にも、

XZIBIT の新作にも、

THE GAME はゲスト参加している。

このあたり、

THE GAME が前述の “WEST COAST HIP HOP復権”

担い手としていかに重要な役割を果たしているか?

ということが如実に現れていると言えるだろう。

続く⑭も DOGG POUND の二人をゲストに招いているあたり、

L.A.のGANG BANG色の強い楽曲に仕上がっている。

しかもプロデュースには JELLYROLL なのだから、

その耳当たりはモロだ。

MR. PORTER 製作、JAMIE FOXX 参加の⑮に続く最後の二曲、

JUST BLAZE 製作、NAS がゲスト参加した⑯と、

WILL. I. AM 製作、自身と FERGIE の参加した⑰は

個人的にはハッキリ言っていらなかった。

JUST BLAZEWILL. I. AM 二人とも、

先程大絶賛したばかりなので、

余計に残念である。

 

。。。。。

 

総評をまとめていこう。

本作についての評価の基準となるのが、

DRE 不在の影響が作品にどう作用しているか?!”

という点に集約されていると思うのだが、

“ラップ” の面では、

DRE 不在によりインパクトを損なうという

マイナス面も伺えはするのだが、

まあそれ以上に、

前作と比べてスキルフルなフロウが楽しめるし、

それ以前に、

個人的にあまり好きでない 50 のラップを

聴かされないで澄むというのがプラス点に繋がっている。

“ビート” の面においてこそ、

DRE 不在の影響が懸念されたのだが、

そんな心配もどこ吹く風といったところで、

今作も前作に劣らぬほどに完成度は高い。

DRE 不在でここまでできているのだから、

THE GAME の株も逆に上昇していると言えるだろう。

だが、

正直、前作ほどの魅力を感じなかったのも事実ではあるが。。。

 

オススメ度 9.3

(ラップ:1.7 トラック:1.9 キャラ:1.9 話題性:2.0 構成:1.8)

 

 

 

ちなみに、

彼の前作 「THE DOCUMENTARY」 の評価点は

オススメ度 9.7 (ラ:1.9 ト:1.9 キ:1.9 話:2.0 構:2.0)

でした。

これは当ブログの昨年 (2005年) の

ベスト・アルバム・ランキングで

1位の評価を与えています。

 

  

 

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コメント

いつも素晴らしい記事、本当にありがとう
ございます。

今回も専門的であると同時に、分かりやす
くて素晴らしかったです!

この作品が12月31日のYOUさんのランキ
ングで、何位に入るか今から楽しみです

>イタリア研究会さん
記事のアップ、遅くなってゴメンなさい。
先週の土曜(12/2)に書き始めたのですが、仕事が忙しくて、寝る時間もほとんどなかった一週間でした。
 
いつもなら勢いで書いてしまうのですが、GAMEは個人的に期待しているラッパーなので、できるかぎりきちんとしたものが書きたくて、それで余計に時間がかかってしまいました。
 
とにかく今回はいつにも増して気合を入れて書いたので、楽しんで読んでもらえれば光栄です。 

続きが読みたくてうずいとりますw

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